リアルな現実社会の問題を映画にした監督の手腕に脱帽
大沢たかおと聞けば、優しく穏やかな役を演じる俳優というイメージの人が多いのではないだろうか。しかし、スクリーンデビュー作で彼が演じた役はマフィアであり、その後も折りに触れ苛烈な役を演じてきている。本人曰く、「いろんなタイプの役をやっているんだけど、なぜか、怖くない役を演じた作品ばかりがヒットする」とのことだが、ハードなキャラクターを演じる時に見せる凄味は、大沢の俳優としての幅の広さの証である。そんな彼が「徹底的に贅肉を削ぎ落とした役」と語るのが、映画『終の信託』で演じた検察官・塚原。担当患者(役所広司)の最後の願いを聞き入れた女医・綾乃(草刈民代)の決断は、医療だった のか、殺人だったのか-。作品後半の45分は、取調室での息詰まるような攻防だ。